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最高裁判所第一小法廷 昭和38年(あ)1759号 決定 1965年4月22日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人三木今二の上告趣意は、単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。(本件で被告人から収賄した菅原巽らは、いずれも日本国有鉄道の職員であり、公共企業体職員等共済組合法二条、四条、八五条により、日本国有鉄道総裁の命により国鉄共済組合の福祉事業に従事していたものであるところ、同人らの所属する大阪もしくは天王子鉄道管理局厚生課の事務分掌は、日本国有鉄道組織規程(昭和三二年一月四日日本国有鉄道公示第一号)八一条別表第一の五、六によって定められ、そのうちに「国鉄共済組合の給付、福祉事業その他業務運営に関すること」が含まれており、右共済組合員の需要に供するため被告人ら業者の納入する物資の購入および配給に関する事務は、前記共済組合法六三条五号にいう「組合員の需要する生活必需物資の買入又は売却」にあたり、前記組織規程にいう共済組合の福祉事業に属することが明らかである。そうすると同人らは、日本国有鉄道の職員たる身分において、その所属する厚生課の担当する日本国有鉄道の事務として、第一審判決判示のごとき組合の事務をも取扱っていたものであり、かかる場合、同人らは、日本国有鉄道法三四条により、法令により公務に従事する者とみなされるのであるから、同人らに対し、その職務に関して金品を贈与する行為は贈賄罪にあたるものというべきである。)

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 岩田 誠)

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